書き換える、わたしたちの未来。RE:VISION
PROJECTMESSAGEARTICLEFAQ

お問い合わせ

ISSUESOLUTIONPROJECTMESSAGEORGANIZERARTICLEFAQ
RE:VISION TV vol.1 イベントレポート【前編】

RE:VISION TV vol.1 イベントレポート【前編】

RE:VISION TV とは、現在もなお深刻化し、更に被害を拡げる、気候変動と難民問題に対する理解を深め、現在を生きるわたしたちが、明日から出来るアクションについて考える番組です。今回はキニマンス塚本ニキさんをゲストとしてお迎えした第1回の様子 (前編) をお伝えします!


キニマンス塚本ニキ (ラジオパーソナリティ・翻訳家)
東京出身、ニュージーランド育ち。オークランド大学卒業後、アムネスティ・インターナショナル、動物保護団体やフェアトレード認証機関などでの勤務を経て、英語翻訳者・通訳として独立。フードロスドキュメンタリー映画『もったいないキッチン』主演。TBSラジオ『アシタノカレッジ』では月〜木パーソナリティとしてカルチャーから社会問題まで幅広く取り上げている。 

天沼耕平 (国連UNHCR協会)
東京学芸大学教育学部卒業後、淑徳中学高等学校において3年間社会科教員として勤務。その後、児童養護施設の指導員や開発系NGOの職員などの経験に加え、熊本県の農業法人において農業にも携わる。2012年に国連UNHCR協会に入職し、「国連難民支援プロジェクト」関東エリアマネージャーを経て、現在は広報啓発事業 / 難民高等教育プログラム担当。

<Summary>
☑︎気候変動の忘れられた犠牲者
☑︎12億人という数字に日本列島が入らないという保証は全くない
☑︎簡単にどちらが「被害者」「加害者」と言えるわけではない
☑︎「私たちがやらなければいけない」

 

ー今回のテーマである「気候変動」と「難民」の問題について、ニキさんは以前からご存知でしたか?

キニマンス塚本ニキ
「気候変動」というキーワードも「難民問題」も、どちらも日本では最近、よく耳にするようになったかなという印象を受けますね。もちろん、そのような単語が生まれる前から、ずっと何十年も前から続いている問題なんだけれど。 

例えば今年の夏も、去年の夏もそうですけど、「記録的な猛暑日」だとか、「殺人的な暑さ」だとか、そういうのが普通のお天気コーナーに出てくる言葉になったのは、ちょっと異常だと感じますし、やっぱり日本にいる我々にとっても、気候変動はこうして、じわりじわりじわりと影響が広がってるのかなあと。元々北海道で獲れていた畜産物が取れなくなっているとか、そういった話も耳にするようになりましたね。

難民問題は、入管施設で色々な方が命を落とされたり、その後の日本政府の責任逃れのように見えるところが問題にもなっていますね。ただ、どうして彼らが日本に来なければならなかったのかが、ちょっと見えづらいのかなと感じるんですよね。難民問題が起きています、日本にも難民がいますっていう話は広がってるけど、なぜその人たちは、生まれ育った国や地域を逃れなきゃいけなかったのかを、もう少し知りたいなと、日々の報道を見て思っています。今日はまさにその二つの関連性について、理解したいなと思っています。

 

ー気候変動も難民問題もニュースで見ることはありますが、その関連性はあまり知られていないように感じます。それでは天沼さん、「気候変動と難民」の問題について、解説をお願いしても良いですか?

天沼耕平 (国連UNHCR協会)
「気候変動」と耳にしたときに、どういったことを思い浮かべるかがポイントだと思うのですが、やはり夏の暑さがどんどん激しくなって、この数年の暑さは半端じゃないなと強く感じますよね。また、気候変動を起因とする水害が、日本でも増えていると感じている方もいらっしゃると思います。

そして、世界では温暖化による海面上昇によって、住み慣れた地域や国を追われて、移動を強いられる人たちや、干ばつで食糧が得られないため、移動をせざるを得ない人たちもいます。もしくは、何とか国に残ろうとはするけれど、限られた資源の奪い合いで暴力行為や紛争が起こることもあります。そういった中で、避難を強いられる人たちが増え続けているというのが世界の現状です。

このような現状は世界中に広がっていて、2019年時点では、2390万人もの人々が、気候変動を原因とする自然災害によって避難を強いられています。そして推計として、2050年には12億人もの人がその影響を受けるだろうという予測まで立っています。今世界の人口が大体80億人ですから、この割合がものすごい数字であることは分かると思います。

そして、何よりもその原因となっているのが、私たちの便利で、快適な生活であるということは否定できないことだと思います。私たちはかなりのエネルギーを使っていますよね。その気候変動に対する影響はあまり知られていないのが現状で、このように避難を強いられている人たちのことは「気候変動の忘れられた犠牲者」とも呼ばれています。
 


ーありがとうございます。天沼さんの解説を聞いていただいて、ニキさんは率直にどのようなことを感じられましたか?

キニマンス塚本ニキ
いや、ちょっと二度見してしまうような数字で、一瞬あり得ないなと思ってしまいますね。こちら、今回のクラウドファンディングのページにも書いてありましたが、2019年に2390万人から、30年先の2050年には12億人になっていて、その計算バグってない?と思ってしまうんですけど、そんなに急上昇していく予測なんですか?

天沼耕平 (国連UNHCR協会)
そういうことになりますね。地球はもう長い時間をかけてひび割れていっているというか、破壊されてきているわけで、私たちがこのまま便利な生活を続けていき、世界が力を合わせて、それに対する対策を打つことができなければ、本当に12億人という推計は当たってしまうものになると思います。

そして、この「12億人」という数字に日本列島が入らないという保証は全くありません。どうしても、数字になると、何か遠い海の向こうの出来事というように感じてしまうかもしれませんが、実際のところ、水害の影響を受けることはどんどん増えてきているわけで、その先で強制移動を強いられてしまうということは起こり得ることだと思います。

キニマンス塚本ニキ
よく「自分ごととして考える」ってよく言われますけど、私は
自分ごととして考えられるまで行動を起こさないっていうのは問題だと思うんですよね。普通に生活していて、自分の視野に入ってくる半径数m、数十mではなく、地球の裏側の見えないところで起きていることって、なかなか自分ごととして捉えにくいかもしれませんが、何か起きてから何とかしなきゃとなったら、あまりに手遅れ過ぎるんじゃないかと思うんですよね。

天沼耕平 (国連UNHCR協会)
このことは強制移動、全般に言えることですが、気づいたときに遅いわけなんです。世界中で今日、強制移動に直面している人たちの多くはこのように思います、
「まさか自分がこんなことになると思わなかった」と。普段から平和な状況にある、便利な生活を享受していると、どうしても自分ごとにするのを疎かにしてしまい、アクションが遅れてしまうんですね。

 

ーありがとうございます。クラウドファンディングの返礼品として、オンライン先行試写会のチケットをご用意しております、映画『グレート・グリーン・ウォール~アフリカの未来をつなぐ緑の長城~』についても触れていきたいと思います。ニキさんにも事前にご覧いただきましたが、印象に残ったシーンやご感想について聞かせてください。

キニマンス塚本ニキ
まず率直に感じた印象は、これは「エンパワーメント」の作品だなって思いました。とりわけ、アフリカに住む女性たちという、これまでもしかしたら最も発言権を与えられてこなかったような、アフリカ人女性たちの姿を通して、自分たちの手で、自分たちの力で、そして言葉や文化で、我々の未来を取り戻そうというすごく強くて、美しい挑戦が描かれていました。

映画の中で色んな国・地域を巡るんですけど、紛争や砂漠化、飢餓などによりたくさん人たちが亡くなってしまうのですが、そのような過去を乗り越えて、どのように今のこの現実とこれからを作っていくのかっていう、もう気が遠くなりそうな規模の挑戦をしている中でも、そこで音楽を一緒に作ったり、子どもたちと一緒に歌ったり、男女とか部族とかそういった分け隔てなく手を取り合っていく姿が印象的でした。

ただ、その中でも私が一番ハッとしたのが「内戦」のシーンですね。両親を失った子どもたちが住んでいる孤児院があるのですが、自分の親が兵士たちに殺されたっていう話のすぐあとで、実際に一般市民をたくさん殺したという元ゲリラ兵の少年たちにもインタビューするシーンもあって。そこで簡単にどちらが被害者、加害者と言えるわけではないんですよね。

元ゲリラ兵の少年も、自分がゲリラ兵になるしかなかった、ならないと自分が殺されてしまうという瀬戸際だったという話があって、そしてその背景には砂漠化をはじめとする気候変動の影響がある。

ーありがとうございます。天沼さんはいかがでしたか?

天沼耕平 (国連UNHCR協会)
印象に残るシーンとしては本当にいくつもあるんですけれど、先ほどニキさんが仰っていた武装勢力に襲撃されたことによって孤児になってしまった子どもたちが通う学校のシーンですね。子どもたちへのインタビューのあとに、彼らが歌を歌うんですけど、その歌詞に「私たちは歩き続ける」や「前に進み続ける」とあって、それを子どもたちが本当に力強い目をして歌うんですよ。

それを見ていると「私たちが(気候変動や難民に対する対策)をやらなければいけない」という気持ちに率直になりました。気候変動もそうですし、それに伴う武装勢力や暴力によって、彼らの何かが奪われていくときに、彼ら自身がこれだけ頑張ろうとしているのですから、それを海の向こうの遠い国のことと捉えるのではなく、私たちも「一緒」にやらなきゃいけないということを強く思わせてくれたシーンでした。

(後編に続く)